封印の森


 窮地を抜けたはずなのに、場は凍りついたままだった。
 眼の前に居るのは、森の民エルフ。恐らくエフィー達を不法侵入者として見ているだろう。勿論、不法侵入には変わりないのだけれど。
 何故この森にいるのか。その質問は答えられそうで答えにくいもだった。
 「神族に会いにきました」などと言えばこの雰囲気だ、間違いなく追い返されるだろう。
 追い返されるだけならいいが、後ろに控えている銀狼に食い殺されるかもしれない。エルフ族は精霊以外の種族を厭うと聞く。事実、人間に対して彼らは、容赦と言う言葉を知らない。平穏と静寂を守るために、どこまでも冷酷になれる種族だと、フィーレの人間は言っていた。
 実際、エルフは返答次第では銀狼の餌にすると言った。
 冗談を言っているようには思えない。答えは慎重に選ばねばならないだろう。

「僕らは……父さんを探しにきたんだ」

 本心全てではないが嘘でもない。
 けれど返って来たきた言葉は、あからさまに疑っているのだと、嫌でも分かる言葉だった。

「翼族なんて、この森にはいないよ。本当にそれだけ?」

 探るような視線。細められた瞳に優しい色など無い。
 エルフが友好的な一族ではない事くらい、重々承知の上であった。しかし、エフィーとそう年の変わらない少年から、こうも敵意をむき出しにされるとは思ってもいなかった。こちらの言い分を聞き入れてくれる隙は、どこを探しても無いように思われた。森を巡る論争で、人間が平和的交渉ではなく、武力行使に物を言わせようとするのも何となく分かる気がした。もしもエルフが皆、他種族に対してこのような態度を示しているのならば、争いに発展してもなんら不思議ではない。
 けれど、ここで引き下がる訳には行かない。全部は話せないにしても、ある程度こちらの目的を理解してくれなければ、今までの苦労が水の泡だ。
 今にも話を終わらせて去ってしまいそうな少年に、エフィーはしつこく食い下がる事にした。

「でも確かに父さんはこの森に来たはずだ」

「あんたの『父さん』の名前は?」

「フェイダ、フェイダ・ガートレン。知ってる?」

 その名を聞いたエルフは少し考え込んだように、白く細い指を顎に当てた。長く癖の無い紫銀の髪が、肩から一房零れ落ちる。初めその髪色を見たときは、不思議でならなかったが、まじまじ見てみると硝子のように光に反射して銀にも紫にも見えた。素直に、とても綺麗な色合いだと思ってしまう。エルフは人よりも繊細で美しい造形をしていると聞いた事があるが、これほど鮮やかな髪色は見たことが無い。
 一瞬の沈黙が流れてから、エルフは小さく口を開いた。

「ガートレン? まさか……」

 何か思い当たる節があったのか、エルフは無表情を崩さずゆっくりとエフィーのほうへと歩み寄ってきた。急に距離を詰めてきたエルフに、ジュリアは警戒してエフィーを庇うように立ち上がる。
 だがエルフは、彼女の事など関係無いといった様子で、ジュリアの横をすり抜けると、体を起こしたエフィーの前まで来た。緊張に身体が強張る。けれどジュリアのように警戒心を面には出さず、エフィーはエルフの行動を待つ。
 エルフはその場にしゃがみ込むと、エフィーの前髪を左の手で掻きあげる。
 額に触れた手は、血の通わない生き物のように冷たかった。まるで本物の人形のようだと、されるがままのエフィーは思った。エルフとは外見も内面も、氷のように冷え切ってしまっているのだろうか。もしもそうならば、どんなに優れた容姿と能力を持っていたとしても、エフィーにとっては悲しい存在でしかない。
 エフィーの額にあるものを見た少年は、驚いたように微かに表情を歪ませた。

「これは……」

 そこにあるものは、海よりも深い青。
 埋め込まれたかのように額に溶け込んだ輝石。生まれ出でた時より、エフィーの体の一部として存在してきた物がそこに存在していた。エルフが驚くのも無理は無いだろう。石が額に埋まっている人間など、そうそういるものではないのだから。
 少年はしばらく黙り込み、やがてエフィーの前髪をそっと元に戻してやると無言のまま立ち上がった。

「フェイダ・ガートレン。 嘘じゃないみたいだね」

 独り言のように呟き、少年はじっとエフィーを見下ろした。

「父さんはどこにいるのか、知っているのか?」

 必死と言わんばかりにエフィーは前のめりになりそうなのを耐えて、少年に疑問の言葉を投げつける。
 けれど少年はまた少し考え込む。
 そしてエフィーとジュリアを順番に見据えると仕方なさそうに口を開いた。

「……ついてきなよ。教えてあげるからさ。そのまま立ち話をするのはきついだろ?」

 そう言ってエフィーの翼を指差す。エフィーは背中が痛む事を思い出した。
 先ほど、銀狼に掻っ切られた羽は未だに血を流している。決して浅い傷ではなかった。一歩間違っていたら、翼と背を切断されていてもおかしくはないほどの鋭い攻撃を受けたのだ。こうして意識を保っているだけでも、自分を誉めてやりたい。
 エフィーはよろけながらも、痛みを堪えて立ち上がった。
 見かねたジュリアがそっと手を差し伸べる。

「よそ者を案内して良いのか?」

「別に構わないよ。手負いの子供に、何か出来るとは思えないしね」

 深手を負ったエフィーなど、警戒する必要も無いと判断したのだろうか。けれど、正直その誘いはありがたかった。今この状態では、話を聞いてもしっかりと聞き取れるか怪しい。意識が朦朧としている訳ではないけれど、傷は痛むし、翼が無ければ村に帰ることも出来ないだろう。

「それに……そんな傷じゃあ帰れないだろ? 神聖な森を血で汚すわけにはいかない」

 まるでエフィーの心のうちを読んだように、エルフは言う。エフィーの事を気遣ってくれたのか、落ちている二人の荷物を銀狼に合図して持たせる。言葉こそ酷いものだが、その行動には思いやりがあった。
 そして、エルフの少年が歩き出したその時だった。
 まるで空から舞い降りる天の御使いのように、崖の上から何か小さなものが降ってきた。
 それは回転しながら、ジュリアの方へとゆっくりと落ちてきた。

「何っ……?」

 ジュリアは何が何だかよく分からずそのまま受け止める。よくよく見ると、それは見覚えのある、淡い緑色の子竜だった。子竜はジュリアの腕の中で小さく鳴くと、甘えるように顔を擦り付けた。

「ミスト」

 先に反応したのは、ジュリアでもエフィーでもなく、前を歩きかけていたエルフの少年だった。
 小さな子竜を抱いているジュリアを、不思議そうに眺めている。

「この子、街道で怪我してたのよ。もしかして貴方の?」

「そう、友達だよ……。あんたが助けてくれたの?」

「うん、まあね」

「他に、誰かいなかった?」

 その質問にエフィーとジュリアはお互いの顔を見合わせた。しかし、記憶のうちでは誰にも会っていない。
 ミストと呼ばれたこの子竜だけが怪我をして、街道を彷徨っていたのだから。

「いなかったわ。この子だけ道にぐってりしてたから、でも何で?」

「いや、いないならいい……」

 それだけ言うとエルフは森を左に曲がった。
 その先には探しても探しても見つからなかった道が存在していた。


◆◇◆◇◆


 移動中、会話らしい会話はなかった。
 エフィーは懸命に痛みを耐えてはいるが、消耗が激しく呼吸も荒い。ジュリアも慣れない魔術の乱発により、疲労を隠せないでいた。
 エルフの少年は必要以上に語る事は無く、気まずい沈黙が場の空気を支配していた。
 森は静寂に包まれ、青白い月が妙に森を寂しく見せる。それでも微かな煌きを纏う蒼き森は、幻想的なまでに美しく澄んでいた。
 そう歩かないうちに小さな小屋が見えてきた。
 家にしては少しばかり背の高い気もするが、木造の家と教会を混ぜたような建物だった。窓の部分には鮮やかな青と緑の硝子がはめこまれ、扉の部分は銀の細工が施してある。近くまで来ると、壁の部分全てに精密な飾り彫りがなされ、小さな家にしては豪奢すぎる印象があった。

「あれが貴方の家?」

 ジュリアは予想していたものと違ったようで、少しがっかりしたような声で問い掛ける。
 彼女の事だから、きっと絵本で読んだような城のような建物を予想していたに違いない。

「まさか、あれは見張り小屋さ。村はもう少し行った所にあるよ」

 そう言って、エルフは小屋の扉を押した。
 小屋に入ると、そこは灯りも灯らない状態で、真っ暗だった。
 少年はずかずかと入り込むと、暗闇の向こうのランプに灯りをともした。柔らかな光が部屋を満たし、視界がやんわりと安定する。

「入って」

 言われるがままに二人は小屋へと入った。
 中は外装よりも広く思えた。
 余計なもののあまり無い部屋だが、テーブルや長椅子など、どれも細かな蔦模様の彫刻が施されていて、質素ながらも品のよさが窺えた。

「そこに座って」

 二人は示された先の柔らかな長椅子に居心地が悪そうに座る。
 自分達の知っている世界とはまた違った雰囲気に圧倒されているのだ。洗練された部屋に、あまりにも相応しくない気がして、落ち着き無く周囲を見回す。
 部屋を照らすランプには蝋燭ではなく、光を放つ宝石のようなものが収まっている。それは精霊だった。人や翼族は灯りには火を使う。だが、炎を毛嫌いするエルフは精霊の力を借りて灯りを作るのだ。まるで御伽の国に入った感覚だった。
 きょろきょろと辺りを窺っていた二人の前に、棚から何かを取り出してきたエルフが腕を出す。

「薬。まずはその傷を手当てしなよ」

「あ、ありがとう」

 エルフから差し出された箱をジュリアは受け取る。中には知らない薬品が瓶詰めにされていた。全てエルフ語で書かれているため、どれが傷薬なのか判断しかねる。戸惑うジュリアを一瞥し、少年は「赤い奴」と短く言う。ジュリアは赤く平べったい瓶を手に取ると、少年に判断を仰ぐ。エルフは無言で頷いた。
 ジュリアは白い軟膏状の薬をエフィーの羽と背中に塗っていく。傷口に触れるたびに、エフィーは肩を震わせ、小さく呻き声を上げる。傷は思ったよりも深く、痛々しい限りだった。本来なら傷口を清潔な水で洗い流すべきだが、今はそこまで求めるのは無理そうだ。魔術で治療してやりたいのは山々だが、深すぎる傷はジュリアの力量では癒せそうに無い。
 少年は向かいのイスに腰を降ろすと二人の光景を無言で見守っていった。
 ジュリアが慣れない手つきで包帯を巻き終え、使用した薬を箱に片付ける。ようやく一段落して、エフィーとジュリアはほっと息を吐いた。

「フェイダ・ガートレンの子供だっけ?」

 沈黙を守り、静かに佇んでいた少年は、ようやく話せる体制になった二人に、声をかけた。

「父さんを知ってるのか?」

「俺は実際会った事は無い。だけど人づてに聞いた」

「他のエルフの人に?」

「……いや、エルフじゃない。でも残念だったね。あんたの『父さん』はもうこの森にはいない。と言うよりこの世界にはいないって言った方が適切かな」

 長老も同じような事を言っていた。少年の言葉を聞き、先日のやりとりを意識の中で思い出す。大陸にいないというなら、百歩譲ってありえるかもしれない。けれど、この世界にいないというのは、死を意味しているのだろうか。

「この世界ってどういう意味だ? 君は父さんがどこにいるか知っているのか?」

「この世界、つまり地上界にはいない。今どこにいるか、詳しくは知らないけど、大体見当はつく」

「待ってよ、この大陸を出るなんて出来るはず無いわ。だって、ここはセレスティスだもの」

 セレスティスは封印された土地。外に出る事も、外から入る事も許されない大陸だ。空間でも移動しない限りは脱出は叶わない。それが世界の理。神話の戦争の後、この大陸は神々に呪われた。広い世界でぽつりと切り離されたたこの地は、孤立無援。何千年もの間、外からの訪問者も無く、旅立ち帰った者もいない。
 普通に考えて空間を移動できる者などいるはずが無い。ましてやエフィーの父は魔法とは全く無縁の翼族である。他の世界へ行くなどまず有り得ない。そして魔術を扱えるジュリアも、空間を移動する術など無いと言っていた。つまり、物理的に無理な話なのだ。

「そう、よく知ってるね。確かにこの大陸を出るなんて出来るはずは無い。でも、限られた一族にはその術がある」

「どんな一族よ」

 少女が、少しばかり挑戦的な態度を取るのはなぜだろうか。
 先ほどからジュリアの神経がかなり逆立っているのが分かる。
 だが、空間についての理などを知らないエフィーに間に入る権利は無い。少年と対等に言い合えるのはジュリアだけだ。エフィーは黙って問いの答えを待つ。
 少年はジュリアの挑発まがいの態度を無視しているのか、気にした様子も無く答えを返す。

「――神族、それに刻人」

 神族、その単語を聞いたとき、エフィーは思わず口走ってしまった。

「神族! やっぱりここにいるんだ?」

 神族という言葉に過剰に反応してしまうのは、好奇心の強さのせいだ。
 ジュリアは、はぁ、とため息を吐き、このあとの恐ろしい対応を想像した。
 対する少年の反応はやはり冷ややかで、どこか警戒の色が窺える。

「父親は名分で、本当の目的は神族?」

「違うわよ! エフィーはお父さんを探しに来ただけだわ。神族はちょっと興味があるだけで、ねえ?」

 ジュリアの必死の誤魔化しは無駄でしか無かった。
 エフィーの眼は心なしかいつもより輝いていたし、その表情は何を質問しようかと考えているようだ。

「なあ、じゃあ父さんは神族に会って外の世界に出たんだ!? 今も神族はここにいるのか?」

 大いに期待しているような表情。
 少年はその反応に少し驚いたような顔をしたが、すぐにもとの冷静な顔に戻り、

「再度期待を裏切るようだけど、ここにはもう神族もいない。遠い場所に行ってしまったから」

 と、声を落として呟いた。

「遠いって、やっぱりこの大陸の外に?」

「いや、……誰の手も届かないところに」

 言葉の意味を理解したジュリアは開きかけた口を閉ざした。彼の言葉が意味する事は恐らく一つだけ。
 けれどエフィーはその真意に気付いていないらしく、無邪気なまま問いを投げる。

「手の届かないってそんな場所あるのか?」

 ジュリアはため息をついて「あのねえ」と肘でエフィーを突っついた。
 しかし、エルフはジュリアの予想しない答えを紡ぎだした。

「あるよ。――神界さ。神とその眷属のみ住まう事を許された地。異世界の果てとも言われている神界がね。もしかしたら、あんたの父親もそこにいるかもね」

「父さんが? でも何で……」

「フェイダは、この森にいた古代神と約束をした。そしてその言葉に従い、外の世界に出て行った」

 初めて聞く事だった。何もかもが、新鮮な真実。だけど、聞けば聞くほどその理由がわからない。底の見えない疑問が、次から次へと浮かび上がってくるかのよう。

「約束って? それに古代神っていうのは……」

「約束の内容は知らない。古代神はこの森にいた神族で再生と破壊を司る女神だ。フェイダと古代神の関係は詳しく知らないけど、以前からの知り合いだったらしい」

「どうして外の世界に?」

「さあ。そこまでは聞いていない」

 エフィーの問に対して、エルフは機械的に答えを紡ぐ。
 嘘をついているようには見えないが、淡々とした口調で示される答えは全て曖昧だ。
 やっと父に、そして神族に会えると思っていた。だが父は遥か遠い場所へ旅立ってしまった。追うにも少なすぎる情報で、果たして辿り着く事が出来るのだろうか。

「僕達も父さんのいる場所にいける?」

 最後の便りといわんばかりに聞いてみる。
 ジュリアも、微かに期待の眼差しで答えを求めた。

「それは無理。神界への扉は神の一族にしか開けないから」

 予想はしていたが、やはりこうもきっぱり言われると少々落ち込む。残念そうに二人は同時に溜息を吐いた。

「でも、方法がないわけじゃない。一人だけ、この世界に神族がいる。そいつなら神界への道を繋ぐ事が出来る」

 その言葉に沈んでいた少年と少女の顔がぱっと明るくなる。

「その人、どこの誰?」

 声をそろえて質問する。

「古代神の後継者、レイル。この世界に存在する最後の神族だよ。でもね、訳あって今はこの地にはいない」

 また振り出しに戻ってしまった。

「どこにいるの?」

「分からない。でもきっとまだこの世界にいる。多分セレスティス以外の大陸に……」

 セレスティス以外の大陸。考えた事も無かった。自分達の世界はセレスティスであり、それが全てだったからだ。外の大陸に、なぜ出て行ってしまったのだろう?
 聞きたい事が多過ぎて、でもそれは一つに絞れるものではなく、エフィー思考をめぐらせる。一つでも可能性に繋がればいいと、質問を選び問いかけた。

「外の世界には出れないのか?」

「方法はある……」

 消え入るような声で呟いたエルフに、ジュリアはさらに強く聞く。

「行けるの!?」

「ただ……」

 躊躇したように言葉を濁したエルフは、視線を二人の瞳から外し、磨かれた机へ向け考え込む。部族の秘密か、二人に告げる事を憚られるような方法か。迷いの生じた様子に、答えを待つ二人の胸に僅かな不安が湧く。恐らく、あまり良い方法でないのだろう。

「ただ?」

「もし、この方法を使うならそれなりの覚悟が必要だよ」

「どういうこと?」

 エルフの少年は深く溜息をつくと話し始めた。

「このセレスティス大陸は、かつて神族が栄華を極めていた。戦争で多くが失われたけど、この大陸には神々の遺産がいくつか存在する。この森にも古代神の神殿あり、そこに神の作った魔道器が多数ある。でも、あれは……転移の魔道器は欠陥があって移動手段には勧められない」

「どんな欠陥?」

「大陸を移動する事は出来る。ただ、行ったら二度と帰っては来れなくなるんだ」

 その言葉に二人はただただ閉口した。
 行きたいのは山々だが、帰って来れなくなるとそれはまた別問題である。

「………」

 再び沈黙が流れる。流石の二人もこれにはどうしようもなかった。

「やめたほうが良いと思う。……帰る場所があるなら。今日はゆっくり考えなよ。明日、答えを聞くから」

 そう言うとエルフは立ち上がり、入ってきた扉の方へ歩き出した。

「どこに行くの?」

 ジュリアが呼び止める。少年は軽く振り返った。

「俺は村に帰らせてもらうよ。あんた達はここに泊まるといい。二階が寝室になってるから。……もし、それでも行くと言うなら、小屋を出てまっすぐ西に行くんだ。そこに村があるから、明日の朝まで待っててあげるよ」

 それだけ言い残すとエルフは小屋から出て行った。
 その事に気付いた子竜は一声鳴くと、ソファーの上で丸くなった。

 部屋は静寂を取り戻したかのように静まり返った。
 二人は黙るのみで、しばらく無の状態が続いた。






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